以下のような興味深い問題提起がありました。
ここでは、http://をなくすための動きについて考えてみましょう。
まずはURLの仕組みをおさらい
この話題を理解するために、まずはURLの仕組みをおさらいしておきましょう。
URLは、特定のページに割り当てられたアドレスであり、アドレスバーに入力することでそのページにアクセスできます。
URLには特定の構成要素があり、例えば以下のURLを見てみましょう。
https://clean-copy-of-onenote.hatenablog.com/entry/self-audiobook
- https:プロトコル(通信の方法)
- clean-copy-of-onenote.hatenablog.com:ホスト名(サーバーの名前)
- entry/self-audiobook:サーバー内のファイルのパス
また、URLにはポート番号を含めることもでき、例えば
https://clean-copy-of-onenote.hatenablog.com:443
のような形になります。
何が問題だったのか
なぜ http:// や https:// を無くしたいのかを整理してみましょう。
URLの役割は「どこ」のページにアクセスするかを指定することです。
そのため、どのサーバーの、どのファイルにアクセスするかを指定するのは納得できます。
しかし、http:// や https:// は「どうやって」アクセスするかを表しており、これが違和感を生む原因となっています。
さらに、「どこ」のページという情報は人にとって有用な情報ですが、「どうやって」は主に機械にとって有用な情報です。
これらが人の目に最初に入る場所に混在してしまうのは、視覚的にも混乱を招く原因となります。
元記事では、http://wwwとwwwの部分も問題視しています。
これは、多くのURLにおいて定型文となっている部分が冗長であるという点でも問題視されているのでしょう。
これらを踏まえた上で、http:// をなくすための技術を見ていきましょう。
実はhttp://を省略してもアクセスできる
実は多くのブラウザでは、http:// は省略することができます。
例えば、ホスト名をアドレスバーに貼り付ければ、正しくアクセスできることがほとんどです。
これは、ブラウザが通信の方法としてhttpsを補完してくれるためです。
例えば、ホスト名 clean-copy-of-onenote.hatenablog.com
をアドレスバーに入力すれば、https://clean-copy-of-onenote.hatenablog.com/にアクセスできます。
wwwも省略できる場合がある
例えば、google.com
とアドレスバーに入力すると、Googleのトップページ
https://www.google.com/
にアクセスすることができます。
これは、google.com
というホスト名から、www.google.com
にリダイレクトする設定がサーバー側で行われているためです。
また、ブラウザがwww
を補完する場合もあります。
例えば、東京大学の公式サイトでは、u-tokyo.ac.jp
をwww.u-tokyo.ac.jpにリダイレクトしていません(執筆時点)。
手元のChromeで試してみると、u-tokyo.ac.jp
だとアクセスできませんでしたが、
一度正規のアドレスで東京大学のホームページにアクセスした後に、
アドレスバーにu-toyo.ac.jp
を入力すると、www
が補完されてアクセスできました。
ネットワークの努力
URLは情報にアクセスする際に「どこ」にその情報があるかを指定するために使われます。
私たちは「何の」情報が欲しいのかを知っていますが、それを「どこ」に置き換えてアクセスしているのです。
この置き換えを手助けしてくれるのが検索エンジンです。
理想的な形は、「この」情報が欲しいとネットワークに伝えるだけで、その情報を取得できるというものです。
このようなネットワークを実現するために、情報指向ネットワーク(ICN)というアプローチが研究されています。
ICNでは、URLの代わりに「インタレスト」と呼ばれるもので取得する情報を指定します。
これにより、http://は実際になくなる可能性があります。
生成による場所の消滅
そもそも、なぜ「場所」を指定する必要があったのでしょうか。
場所を指定することのメリットは「共有」にあります。
同じ情報にアクセスするためには、その情報をどこかに置き、皆がそこに集まるのが便利だからです。
しかし、最近話題の生成AIでは、ブラウジングの主要な要素である検索すらも生成的に解決しようとする動きがあります。
この技術では、検索に対する結果を「即興」で生成AIが生成してくれるのです。
つまり、特定の問題に対して、その人だけの解決策を提示する可能性が生まれつつあります。
生成AIがパーソナライズされたブラウジング体験を提供するようになると、情報を共有する「場所」を意識する必要がなくなるかもしれません。
こうして生成AI中心のブラウジングが普及すると、URLの必要性は薄れ、http://は徐々になくなっていくかもしれません。